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翠月 プロローグ-記憶-

――ずっとそばにいられると思っていた。

――この世で一番大切な友達。

――なのに……。

「ごめんね……。」  夜、月明かりの射す公園に二人の少年がいた。
 一人は栗色の少しパーマがかった髪に栗色の瞳とオレンジ色のパーカーと青いジーンズを着ている。
 もう一人は黒い髪に焦げ茶色の瞳と緑色のトレーナーと少しダボついたズボンを着ていた。
 栗色の髪の少年は小さく謝ることしか出来ず、黒い髪の少年は泣きじゃくっている。自分では救って上げられないという悔しさが黒い髪の少年の瞳を濡らし続けた。

――血に汚れているとか、親を殺したとか関係無い。

――でも……声が出なかった……。

 夜の公園にバイクのエンジン音が虚しく鳴り響きそして遠のいていった。
 一人取り残された黒い髪の少年は唇を噛み締めて空を仰ぐ。
 先ほどまで出ていた月は雲に覆われ、雨雲が張り出していた。少年の顔に一滴、二滴と雨粒が当たった後、本格的に雨は降り注ぐ。
「樹(いつき)のバカ……。」
 ぽつりと呟いた声は、誰にも聞こえずに、降りしきる雨音にかき消されていった。

 軍用車の運転席に座る黒い髪の少年、仲迪 智(なかみち さとし)は悲しげに遠い幼き日を写した一枚の写真を見ていた。何度も見る別離の夢に心を掻き乱され、どうすることも出来なかった自分への苛立ちが涙となって今も溢れ出てくる。
 ふと車のミラーを見ると、幼くヤンチャそうな顔立ちに緑色に光る自身の目。取り戻したい一心で、力を求めた代償は彼の瞳の色と人や動植物の魂が見えてしまう目だった。想い人を探し当て再び出会った時、こんな自分をどう思うだろうかという不安を抱えながら彼は瞼を閉じた。
「絶対、探し出すんだ。」
 不安を払拭するように力を込めて声を出す。たとえ気味悪がられたとしてもこれは自分で決めたこと。今は探し出すことだけを考えれば良い、と彼は目を見開き車のキーに手をかけた。

翠月 プロローグ-了-


☆蒼月☆

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☆翠月☆

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☆蒼月・翠月特別編☆

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☆短編☆

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