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蒼月 プロローグ-記憶-

――これから僕は旅に出る。

――君のことが大切だから。

――君のことを守りたいから……。

「ごめんね……。」
 夜、月明かりの射す公園に二人の少年がいた。
 一人は栗色の少しパーマがかった髪に栗色の瞳とオレンジ色のパーカーと青いジーンズを着ている。
 もう一人は黒い髪に焦げ茶色の瞳と緑色のトレーナーと少しダボついたズボンを着ていた。
 栗色の髪の少年は小さく謝ることしか出来ず、黒い髪の少年は泣きじゃくっている。自分では救って上げられないという悔しさが黒い髪の少年の瞳を濡らし続けた。

――この血に塗れた手で君に触れることは出来ないよ。

――叶うなら僕のことを忘れて……ねぇ智(さとし)……。

 夜の公園にバイクのエンジン音が虚しく鳴り響き、栗色の髪の少年はその場から逃げるように走り去った。ミラー越しに泣かせたまま置いてきてしまった黒い髪の少年の姿を見ようとする。
 しかし映っているのは民家と雨雲だけだった。
「ごめん……。」
 急に視界が歪み、枯れたと思っていた涙が溢れてきた。
 降り始めた雨粒と同化しその涙は誰にも見られることはなかった。

 まどろみの中でだけ過去の記憶が蘇えり、目が覚めた時には消えている。
 ぼんやりと瞼を開いた先は安宿の天井だった。
 ベッドルームの天井へ設置された丸く大きな鏡には、年相応ではない、中性的な顔つきの水色の髪と瞳を持つ少年が映し出されている。
 高見 樹(たかみ いつき)、それが鏡に映る僕の名前だ。
 安っぽいベッドの上に白いタンクトップと青いジーンズ姿で寝ていた僕はゆっくりと上体を起こす。
 瞼に溜まっていた滴が頬を伝い零れ落ちていた。
 それを拭うこともせず僕は枕元に置いていた銀色のリボルバー式拳銃『シリウス』と銃口が二つある金色の中折れ式拳銃『レグルス』の手入れを始める。
 過去も夢に映る友も僕自身の生死にさえも今は何も感じない。
『壊さなければならない』、ただそれだけが僕を突き動かし続けた。
 君を守りたい一心で力を求めた代償は感情の欠落。それが正しい行いだったのか今の僕は考えることもなく、ただ淡々と壊し続けるだけだった。

蒼月 プロローグ-了-


☆蒼月☆

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☆翠月☆

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☆蒼月・翠月特別編☆

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☆短編☆

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